
災害時、自宅で生活できなくなったとき、「車で避難生活を送る」という選択肢があります。
避難所よりプライバシーを確保しやすく、家族だけの空間を作れることは車中泊のメリットです。
一方で、災害時の車中泊には注意すべき点もあります。
狭い車内で長時間同じ姿勢を続けることによるエコノミークラス症候群、夏の熱中症、冬の低体温症、一酸化炭素中毒などです。
新潟市も、車中泊避難は長期の避難生活には適さず、一般的には推奨されない避難方法としています。やむを得ず車中泊避難を選択する場合には、安全対策が必要です。
私たち夫婦は、釣りや登山、旅行などで15年以上車中泊を続けています。
年間約30回、これまでの経験は450回以上です。
もちろん、趣味の車中泊と災害時の避難生活は同じではありません。
それでも、
「狭い車内で寝るには何が必要か」
「限られた収納スペースに何を積んでおくと役立つか」
「実際に使って便利だったものは何か」
については、長年の経験から分かったことがあります。
この記事では、公的機関が示している2026年現在の注意点を踏まえながら、450回以上の車中泊経験から「災害時にも役立つ車の備え」を紹介します。
普段の旅行では、車中泊だけにこだわらず、旅の目的や疲れ具合によってホテルも使い分けています。
[車中泊とホテルはどっちがいい?15年以上旅して分かった使い分け]では、釣り・登山・長距離移動など、実際の判断基準を紹介しています。
車中泊避難は「避難所の代わり」ではない
最初に大切なことを書いておきます。
私は車中泊が好きですが、災害時に誰にでも車中泊を勧めるつもりはありません。
車中泊には、
- プライバシーを確保しやすい
- ペットや小さな子どもがいる場合に選択肢になる
- 自分たちの荷物を近くに置ける
- 普段使っている車を生活空間として利用できる
といったメリットがあります。
しかし、避難所に比べて健康状態を把握してもらいにくく、支援情報や物資の情報を受け取りにくくなる可能性があります。
さらに、長時間狭い車内で過ごすこと自体に健康リスクがあります。
自宅が安全なら在宅避難、親戚や知人宅に避難できるならそちらも選択肢です。
車中泊は、
「安全な避難方法の一つとして、必要な場合に使う」
くらいに考えるのがよいと思います。
車中泊避難で最初に注意したい4つのこと
1.エコノミークラス症候群
災害時の車中泊で特に注意したいのが、エコノミークラス症候群です。
狭い車内で長時間同じ姿勢を続け、水分摂取も不足すると、血栓ができる危険があります。
対策として、
- こまめに水分を取る
- ときどき車外に出て歩く
- 足首を動かす
- ストレッチをする
- ゆったりした服装で過ごす
- 寝るときはできるだけ体を水平にする
ことを意識します。
車中泊経験からも、足を伸ばして横になれる環境を作れるかどうかは、寝心地だけでなく非常に重要だと感じています。
2.暑さ・寒さ
夏の車内は危険な温度になることがあります。
日中はできるだけ車内にとどまらず、危険な暑さや寒さの場合には無理をせず、安全な建物へ移動することを優先します。
サンシェードやカーテンは、日差しだけでなく視線を遮る目的でも役立ちます。
冬は寝袋、毛布、防寒着、床からの冷気を遮るマットなどが重要です。
3.一酸化炭素中毒
寒いからといって、一晩中エンジンをかけたまま寝るのは避けるべきです。
長時間のアイドリングでは、一酸化炭素中毒の危険があります。
また、車内でガスバーナーやアルコールストーブなどの火器を使用するのも危険です。
調理や湯沸かしが必要な場合は、安全を確保できる屋外で、製品の使用方法を守って行います。
4.避難場所そのものの安全
車で避難できれば、どこに停めてもよいわけではありません。
地震なら建物、電柱、看板などが倒れてくる場所。
豪雨なら浸水する可能性のある低い場所。
土砂災害の危険がある場所。
こうした場所を避け、自治体から車中泊避難場所などが案内されている場合は、その情報を確認します。
450回以上の経験から、車に備えておきたいもの
私が長年車中泊をしてきて重要だと感じているのは、大きく分けて、
水・食料、トイレ、睡眠、照明・電源、清潔、衣類、プライバシー
です。
全部を大量に積む必要はありません。
車内空間には限りがあるので、
「小さく収納できる」「複数の用途に使える」
という視点で選んでいます。
1.水|夫婦2人なら3日分で18リットルが目安
内閣府は、飲料水について1人1日3リットルを目安に3日分の備蓄を案内しています。
夫婦2人なら、
3リットル × 2人 × 3日 = 18リットル
です。
2リットルのペットボトルなら9本になります。
18リットルとなると、それなりのスペースを使います。
私の場合は、倒したシートの隙間など、普段デッドスペースになっている場所を収納に利用しています。

ただし、水や食品を長期間車内に置く場合には、製品ごとの保存条件を確認する必要があります。
特に真夏の車内は非常に高温になります。
「非常食だから何年でも車に置いて大丈夫」とは考えず、定期的に確認・交換する方が安心です。
2.食料|火を使わなくても食べられるものを中心に
災害時の食料で私が重視するのは、
「調理しなくても食べられること」
です。
普段のアウトドアなら料理そのものも楽しみですが、災害時は水、燃料、洗い物をできるだけ減らしたいからです。
候補になるのは、
- 保存食
- 缶詰
- 栄養補助食品
- ナッツ類
- ビスケット
- 水でも戻せるアルファ米
などです。
アルファ米は、お湯がなくても水で作れる商品があります。

これは災害時には大きなメリットです。
ただし、通常のアルファ米を真夏の車内に何年間も置き続けることは勧めません。
メーカーが車載を想定した防災食品もあるので、車に長期間常備するなら、高温環境への対応が明記された製品を選ぶ方法もあります。
私は普段の車中泊でも食料を使うため、食べたら補充する「ローリングストック」を基本にしています。
3.携帯トイレ|これは優先順位が高い
災害時、水や食料と同じくらい困るのがトイレです。
水を飲めば当然トイレに行きたくなります。
しかし、断水や下水設備の被害によって、普段のトイレが使えないことがあります。
そこで車に積んでおきたいのが、
便袋+凝固剤タイプの携帯トイレ
です。
電気や水がなくても使え、収納場所もほとんど取りません。
簡易便器や折りたたみ式のチェアと組み合わせれば、車外でも使いやすくなります。
タープなどで周囲を囲えば、プライバシー確保にも役立ちます。
使用後の便袋は密閉し、自治体の指示に従って処分します。
災害時はゴミ回収がすぐに再開されない場合もあるため、防臭袋なども一緒に用意しておくと安心です。
4.快適に眠るには「平ら・柔らかい・適温」の3つ
450回以上車中泊をしてきて、睡眠についてはかなり試行錯誤しました。
結論はシンプルです。
平らにする。
硬さをなくす。
暑さ・寒さを防ぐ。
この3つです。
足を伸ばせる平らな場所を作る
座席に座ったまま寝るより、できるだけ体を水平にして足を伸ばせる状態を作ります。
車種によってはシートを倒しても段差ができます。
私はマットなどを使って段差を埋めています。
災害が起きてから初めて試すのではなく、一度自分の車で実際に横になってみることをおすすめします。
マットは非常に重要
車の床や倒した座席は、想像以上に硬いものです。
厚手のマット、キャンプ用マット、折りたたみマットなどが1枚あるだけで寝心地は大きく変わります。
断熱材としても役立つので、冬は特に重要です。

寝袋・毛布
寝袋はコンパクトに収納できるので、車中泊と相性がよい道具です。
寒い季節には毛布や防寒着も追加します。
私は寝袋や衣類を座布団カバーに入れ、普段はクッションとして使っています。
収納物そのものを普段使えるものにすると、車内で邪魔になりにくくなります。

5.照明と電源
夜の車内では照明が必要です。
車のルームランプだけを長時間使うと、車のバッテリーを消耗する可能性があります。
そのため私は、
- LEDランタン
- ヘッドライト
- 懐中電灯
- モバイルバッテリー
などを用意しています。

特にヘッドライトは両手が空くので便利です。
スマートフォンは、災害情報の確認や家族との連絡に重要なので、モバイルバッテリーも優先度の高い装備だと思います。
6.清潔を保つもの
断水すると、お風呂だけでなく手洗いや洗顔も難しくなります。
車に置いておくと便利なのが、
- ウェットティッシュ
- 体拭きシート
- ティッシュ
- トイレットペーパー
- ゴミ袋
- タオル
などです。
私は普段の車中泊でも赤ちゃん用のおしり拭きをよく使っています。

大判で使いやすく、体を拭いたり、テーブルなどを拭いたりと用途が広いからです。
災害時は水をできるだけ飲料用に残したいので、水を使わず清潔を保てるものは役立ちます。
7.着替えと防寒着
私は下着や靴下など最低限の着替えを車に置いています。
災害は、自宅にいるときに起きるとは限りません。
外出先から帰れなくなる可能性もあります。
そのため、
- 下着
- 靴下
- 動きやすい服
- タオル
- 防寒着
などを少量入れておくと安心です。
これも寝袋と同じように、座布団カバーなどへ入れてクッションとして使えば収納スペースを無駄にしません。
季節が変わったら、中身を確認するようにします。
8.サンシェード・カーテン|温度だけでなくプライバシーにも
車中泊では、外から車内が丸見えになることが大きなストレスになります。
そこで役立つのが、
サンシェードやカーテン
です。
日差しを遮るだけでなく、
- 外からの視線を遮る
- 夜間の車内照明が外へ漏れるのを減らす
- 冬に窓から伝わる冷気を減らす
といった効果があります。
災害時は精神的な疲労も大きくなります。
夫婦だけで落ち着ける空間を作れることは、車を利用する大きなメリットだと思います。
車に常備しない方がよいものもある
ここは、2020年にこの記事を書いた当時から私自身の考えが変わった部分です。
以前の記事では、ガス缶などを季節によって車に積んでいることを書いていました。
しかし現在は、カセットボンベなどの燃料を車内へ常備することは勧めません。
車内は季節や駐車場所によって高温になります。
カセットボンベは高温になる場所を避けて保管する必要があり、車内での長期保管には向きません。
アルコールなどの可燃性燃料についても、私は普段から車内に置きっぱなしにはしない方針です。
アウトドアで使うときに持っていくものと、
災害に備えて一年中車に置いておくもの
は分けて考えるようになりました。
450回以上車中泊をしてきたからこそ、
「今まで事故がなかったから安全」
とは考えないことが大切だと思っています。
車載防災用品は「一度積んで終わり」にしない
防災用品は、積んであるだけでは十分ではありません。
水や食料には期限があります。
モバイルバッテリーは放置すれば充電が減ります。
懐中電灯の電池も確認が必要です。
衣類は季節によって変える必要があります。
そこで私は、車中泊や旅行で実際に使いながら、
使う → 補充する → 点検する
という形にしています。
普段使っているから、災害時にも使い方が分かります。
これは450回以上車中泊をしてきて感じる、防災とアウトドアの相性のよい部分です。
まとめ|車中泊経験があっても、安全が最優先
私たち夫婦は15年以上、450回以上の車中泊を経験してきました。
その経験から、車内で少しでも快適に過ごすための工夫はたくさんあります。
しかし、災害時の車中泊で最も重要なのは、
快適さではなく安全です。
車中泊避難には、
- エコノミークラス症候群
- 熱中症
- 低体温症
- 一酸化炭素中毒
- 災害情報や支援情報を得にくくなる可能性
などのリスクがあります。
自宅や避難所など、より安全な場所で過ごせるなら、そちらを優先します。
それでも、状況によって車で避難生活をすることになったとき、
水。
食料。
携帯トイレ。
寝具。
照明。
着替え。
サンシェード。
こうしたものがあらかじめ車にあるだけで、できることは大きく変わります。
災害はいつ起きるか分かりません。
まずは自分の車で一度横になって、
「この車で一晩過ごすことになったら何が足りないか」
を考えてみる。
それが車中泊避難への一番簡単な備えだと思います。